仙台高等裁判所 昭和26年(う)532号 判決
ところで論旨は原審検証の際原審裁判官は被害物件の所在場所即ち右窃取の場所が何所であるかという点につき、右A点その他被害者側の指示した場所のみを検証して、被告人の指示した場所を検証しなかつたというけれども、原審検証調書によれば同検証に立会つた被告人は柳原今朝雄だけであるが、同被告人は現場において「本年(昭和二五年)九月十一日午後十一時頃木製枠入鉛タンク二個を盜んだことは間違ないがここ(A点)のような場所から盜んだことはない、私達が盜んだ場所はコンクリートの敷地ではなく、草が生えて下は土の所であつた」旨述べたに過ぎず、その被告人等が盜んだという場所の実地が何所かを指示した形跡はなく又、その検証には原審弁護人毛利将行も立会つていたのであるが同弁護人も右に関し何等の陳述をもした形跡がない。要するに原審検証の際の被告人及び弁護人の態度は被告人等の鉛タンク盜取の場所に関する被害者側の指示を争つたのみで、被告人側としてはその実地を指示する意図がなかつたものと解するの外はない。故に原審裁判官としてはこの点に関する被告人側主張の実地を検するに由なく、従つて之を検証しなかつたことは当然で、その間所論のような不公正を云々する余地はなかつたものというべきである。